一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2014年5月号

高級材復活への道                   館林輝義のぼやき

 

昨年度から林野庁が行っている木材利用ポイントという住宅の補助制度。

スギ・ヒノキなどの地域材を基準以上利用するなどの条件を満たすと、①木造住宅の新築・増築又は購入で30万ポイント/棟、②住宅の床、内壁および外壁の木質化工事使用面積などに応じて最大30万ポイント、③木材製品および木質ペレットストーブ・薪ストーブの購入に最大10万ポイントといったポイント(1pt=\1)がもらえ、地域の農林水産品などや商品券などと交換できるというものだ。不勉強なせいでちょっと驚いたのが、木材を利用した建材に外壁材のサイディングがあったことだ。材料に間伐材のチップを練り込んでいるらしい。この外壁材は②の木質系外壁材になり補助対象となる。(平成26331日で終了)

さて昨年末から消費税の駆け込み需要もあったが、かなり需給がひっ迫していたのは、今までになかったこのような新規の需要が生まれたということもあったのではないかと思う。

 

 

木材の用途としてわかりやすいのは住宅の構造材、造作材であるが、実は年々細っているのではないかと感じる。統計データを見ているわけではないが、高い値段の材料の需要が相当落ち込んでいるのではないだろうか。

 住宅建築の仕事をしていると和室が減っていると感じる。それも高い木材をたくさん使用する本格的な和室が。以前は2間、3間、4間作っていた和室が1間あれば十分をいう家ばかり。さらに大壁で壁天井クロスといった「和室」というより「畳の間」が増えてきている。リフォームでも和室を洋室に変えるリフォームは多いが、洋室を和室に変えるリフォームはほとんどない。デフレ時代が長かったせいか立派な和室の客間を造らなくてはならないという価値観が薄れているのか。

 習慣も変わった。近年の葬儀場の台頭などで冠婚葬祭を自宅でやる習慣が消えつつある。また少子化で親戚の数も減りつつある。また高齢の方々も寝室での寝起きは畳に布団ではなく、フローリングにベッドになってきている。つまり2間・3間続きの和室が生活に必要なくなってきているのだ。こうなるとよほどこだわりのある方でないと造らないという状況になる。

 円高による影響で安い輸入品が入り木材価格の下落、という考えを持っていたが、そもそも高い材料の需要がなくなってきているから今は安いのではないかと・・・

 新築の住宅着工数は最大時の半分以下に落ち込んだ。これも需要減による価格下落の要因。国の住宅政策は、新築からリフォームに舵を切られた。少子化とあいまってますます新築着工数は減っていくだろう。更に需要は減り、下落する。高いものだけでなく並の物の需要が減る。かつて盛んだった木炭の需要が減ったように、市場はしぼんでいく。

 このまま、以前の感覚で木を育てていてもいいのだろうか。

 

 

 冒頭の話は木材の新しい用途を模索した結果の一つだと思われる。エネルギー政策にもからみバイオマス発電も結果的に新しい需要だ。柱として使える良い木材をチップや合板にしてしまうのはもったいない気がするが、そもそも需要を増やさないことには未来はない。需要の創出はうれしいことである。

 ただ、ここで思うのは、需要をどう予測し、どんな需要をどう作り出すかなど、少なくとも100年先を見据えた政策を政府に示してもらいたいものである。それをベースに個人個人が各自でどんな木材を育てるかを考えることができるように。(とにかく間伐をして長伐期施業で大径木を育てるでは、現在需要の減ってしまった大径木の将来をどうするのか見えない。)

 

 

 いろんな業界で今、日本文化の輸出が試みられている。和食も世界文化遺産に登録された。世界的にも日本食レストランは増えているようだ(変なものも多いようだが)。日本文化の輸出をするなら、木の文化も一緒に輸出し、輸出産業として育成していく戦略はとれないものだろうか。まずは世界の和食レストランで檜・杉をふんだんに使った内装をはやらせたらどうだろうか。茶の湯の文化も茶室の輸出もセットにしたらどうだろう。禅の思想の輸出も書院づくりの建物セットでしたらどうだろう。

 実現すれば輸出産業として食産業より大産業になるのではないか。そうなれば、政府の投資も有望産業への投資という大義がつき積極的となり、林業にとって重要インフラである道にどんどん公共投資が行われるのではないか。実際、今まで重要な産業、死活問題の農業のインフラには過去多くのインフラ投資が行われてきた。ヨーロッパに比べ遅れている林業のインフラ整備はそうした中から生まれるのかもしれない。