一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2013年3月号

なぜ山を増やすのか                  館林輝義のぼやき

当然の行為

 部会に入会したばかりの先日、「このご時世に、立木の価値も低いそんなでかい面積の山をなぜ増やしたのか?」という質問をいただいた。

 祖父も増やしてきたし、父も増やしてきた。私からすれば、自分の代で山を増やしたいという気持ち及びその実行は当然という感覚であったが、日頃、厳しい林業の最前線で奮闘されている専業林家の方々にとって、利益のでそうにない山に大きい金額を投じるのは理解に苦しむ行動なのかもしれない。ただ自分にとっては普通の感覚だったためなぜといわれても答えに窮する。なぜ夜寝て朝起きるのか聞かれているような感じだ

根幹

当社は林業を始めて325年になる。岐阜県内の企業では3番目くらいの古さだそうだ。岐阜県恵那市で代々、その時代に対応し生きてきた。小さな会社ながら、誇れるものがあるのは大変ありがたい。ご先祖様に感謝である。

今現在、当社において住宅事業部門が主力事業となっている。家を建てていただいたお客様のおかげで何とか続けることができている。そしてそのおかげで山林を守り続けることができる。しかしこのまま主力事業であり続けるとは限らない。将来予想される新築着工数の減少に対応するには常に進化しないといけない。

但しそんな当社において変わらないこともある。それは当社の根幹が林業であることだ。

不易流行

初めて聞いたのは10年程前、たしか船井総研の小山会長の講演だったと思うが、この言葉は強く心に残っている。変えていくもの変えるべきでないものの区別をし、自らのアイデンティティーを失うことなく変化に対応するという意味と解釈している。

さて当社おいてはどうか、俳句で五・七・五が変わらないように林業が根幹であることは変えない。成り立ちがそこにあり、それを失うことは当社のアイデンティティーを失うことを意味するからだ。

時代の変化は様々である。小さな変化で住宅の仕様を変更することから、大きな変化で全く別事業が主力事業になることまである。主力事業は製材業から住宅事業に代わった。そして今、産業用太陽光発電事業が成長してきている。いずれの事業も林業から派生している。その時代時代でその主力事業が林業を支え続けてきた。

永続

 山を増やす理由はいろいろある。例えば、当社には200300年と思われる天然の東濃ひのきがあるが、先祖代々伐らずに受け継がれてきたそれらの木々を守るためにも、規模拡大しそこに毎年植林し大きなサイクルを作る必要があると考えていること。また住宅事業の利益の一部で山を守り社会貢献をすることは、私を含め全社員の誇りになり、これは大変意味ある投資とも考えられるということなど。

 しかし最も大きな理由は永続のためである。後を継ぎ、墓や山を代々守っていくこと。時代が変化する中、減らさざるを得ない時もある。だからできる時には可能な限り山を増やす必要がある。例えば日本には相続税という恐ろしいものもある。少なくとも、とられてしまうだけは増やさないと子の代に同じだけ引き継ぐことができない。それを果たすためには減る以上に増やさねばならない。そうしなければ減少しいつか山を失う。だからその時代の主力事業で山を増やし守り続け、次代へとしっかりつないでいく。そしてこれは当社を引き継ぐ自分の生きる意味の一つ、自分の存在理由の一つといえる。