一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2013年11月号

森林と花粉症                 河方久典のぼやき

私の悩み

 

杉桧を切って生計を立てているにもかかわらず、私はこの樹種が苦手である。苦手なのは春という季節限定であり、もうお分かりの通り私は花粉症患者なのである。山間部に住み、山間部で仕事をしていてもまったく花粉慣れせず、症状はかなり重い。春、仕事中に間近で見る花粉の飛散量にびっくりすることがある。杉桧の木から放たれる花粉は、まるで山火事の煙と見間違えるほどだ。

 

現在日本の花粉症患者は2000万人と言われ、医療費に2000億円以上使われ、労働損失に至っては600億円にもおよぶといわれる。そして有効な治療方法は現在も確立されていない。なんと国民の6人に1人の割合でこの病を持つ人がいるのである。我が家では家族全員が花粉症である。

 

私とこの病のつきあいは長く、初めて花粉による症状を認識したのは中学生の時であるから、四半世紀以上になる。症状も鼻水から目のかゆみ、頭痛と多岐に亘る、仕事にも日常生活にも著しく差し支えるのであった。

 

山からのSOS

どうして現在このような花粉の量になっているのであろうか。それは戦後の日本の政策で、復興のために杉桧の植林を推奨したからである。杉桧自体は日本の土地に適していたが、本来は植えない方が良い場所にまで一斉に植林をした。植えた時期が同じなので樹木の成長具合も同じで、必然か偶然か、木材価格が高かった頃は計画的な伐採が進み花粉症患者と呼ばれる人も少なく、木材価格が下がり山林が放置され始めるとともに花粉症患者も増え始めた。私が見たあの煙のように舞い上がる花粉は、山が助けを呼ぶ狼煙ではないのか。そして、今や国民病どころか、元メジャーリーガーの松井選手もアメリカで花粉症に悩まされたようであるから日本だけでなく、世界的な問題なのである。

時々、雑誌の投稿欄やネットなどで「花粉の出る杉桧はすべて切ってしまった方が良い」という意見が掲載されていて、私も症状のひどい時など、つい賛成したくなる。しかし森林は地球にとって絶対に必要で、大切なものである。生長した杉桧をバッサリ切って、同じ本数、同じ生長具合の、杉桧とは違う樹種をサッと植林して、「問題解決。やれやれ(村上春樹風)」なんてことは絶対に不可能なのである。

私の使命

一斉植林という過去の政策が良かったのか悪かったのかは分からない。分かるのは先代がこつこつと植林をしてきたからこそ、今の立派な杉桧があるということ。

森林への具体的な花粉症対策がない今、手入れ不足だといわれている日本の森林ではあるが、今後の政府の政策に注意しつつ、個人で今より少しでも健全な状態に整備していきたい。私の代ではこれからも間伐や枝打ちなどの手入れを丁寧に行い、花粉症患者の方々や次代を担う息子たち、世界中の人に「杉桧は地球全体の大切な財産なのだ」という理解をしてもらえるようなしっかりとした森林をつくっていきたい。それが林業家として、また花粉症を患っている私にとってのせめてもの使命だ。小さいが、しかし私にも出来る大切な使命である。

いつか花粉症がなくなる日を夢見て・・・