一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2013年7月号

『雑木』に未来はあるか(Part.2─第三のぎふ証明材)   河尻和憲

広葉樹に魅せられて

昨年9月、私は広葉樹林業の現状についてこのHPに投稿させていただいた。そして続きはまた次回に、という偉そうな締めくくりだったが、早くも自分が投稿する番がやってきてしまった。正直言って何をテーマに前回の続きを書こうかと悩んだが、今回は私が広葉樹に魅力を感じることになったきっかけについて語らせていただきたい。

棈、楓、樫、桂、欅、桜、樒、椣、栓、栃、楢、榛、橅、朴、柳。魚偏なら寿司屋の湯呑に書いてある文字のようだが、これらは全て木偏の付く一文字の広葉樹の名前である。10以上読める方はかなりの樹木通だと思うが、これはほんの一部で、偏だけでなく「栗」のように文字のどこかに「木」が付いている樹木名も含めれば今回の投稿文の大半を字数稼ぎができるほど日本では樹木の種類が豊富である。

8年ほど前、長野のある建具屋さんを訪ねた折、工房に置かれた薬箪笥が目に入った。それは何と60種類もの樹種(一部針葉樹や神代も使われている)が使用されていた。実に多くの彩と趣きがあり、てっきり外国産の樹種も多く使われているだろうと思ったのだが、社長曰く「これは全て近くのチップ工場から分けてもらった国産材です。チップ工場に入る材は低質材かもしれませんが私にとって宝の山です。こんなに樹種の揃う場所は他にありません。」

私の会社もチップを生産していることを全く知らずに言われた社長のこの言葉は私を動かした。ちょうどその頃、我が家は新居を建築中であった。私は早速、地元の建具屋さんにお願いしてパルプ材16種類の雑木(広葉樹)でドアを作ってもらったのだが、無関心・無感動・無表情、いわゆる三無主義の妻(これを読まれたら私は家に入れてもらえないが)が、一目見て思わず「わ、きれい!」と叫んだのを覚えている。そして時間の経過とともにそれぞれの樹種が味のある色合いに変化している。

最初はこのように自己満足にすぎなかったが、徐々にこれを事業化してみたいという欲が出てきた。昨年のこの投稿で述べたように、その後は地元産広葉樹(雑木)パルプ材として入荷するできるだけ多くの種類の原木を板にしてストックし始め、現在進行中の新規事業=岐阜県産広葉樹を活用したインテリア商材の着手に繋がった。

雑木もぎふ証明材?

先般、「ぎふ証明材」の新製品の開発及び生産性の向上等、需要拡大を図ることを目的とした「地域材利用開発プロジェクト支援加速化事業」の事業者の公募があった。この公募には県内外から40社近くの参加があったそうだが、弊社もこれに応募してみることにした。この中で広葉樹をテーマにした企業(団体)は弊社を含め僅か2社だったようで、弊社としては良くも悪くも目立つ存在となったが、幸いにして書類及びプレゼン審査の結果、採用されることとなった。

元々この公募に参加するに当たっては、自分自身、「ぎふ証明材」と言えばスギ、ヒノキ以外には考えられず、弊社にとっては縁のない事業の公募と思っていた。しかし「ぎふ証明材」の定義を再度確認してみると『岐阜県産材であり、合法材である=岐阜県に所在する森林から生産された木材で合法な材(森林法及びその他関係の法令に照らし、適切な手続きで伐採された木材)であること』とある。ならば『スギ・ヒノキに限った材ではない。雑木でも定義通りに伐採された材ならば正当なぎふ証明材ではないか。』と自分勝手に解釈し応募することにした。

広葉樹林業は復活するか

今だから言えるが、実はこの応募の提案書を書いているうちに自信がなくなった項目があった。それは、本事業により、どの程度「ぎふ証明材」の需要拡大に寄与できるのか、について記述せよといった項目であった。周知のことではあるが今、県内での素材生産は圧倒的に針葉樹が多い。前述したように補助制度の適用がない広葉樹など、確固たる販売先が確保されていなければ現状の価格ではとても採算に合わないからだ。

採択された当事業はスギ、ヒノキに比べれば活用する絶対量ははるかに少ないであろう。その意味では貢献度は低いかもしれない。しかし、架線集材など高度な技術を継承されている素材生産業者、原材料が外材主体である現状に疑問を持っている木工業者など、生き残って、いや、今後も活躍していただかなくてはいけない業者も多くおられるに違いない。是非とも賛同いただき、協力をいただけるその時をお待ちしている。