一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2012年8月号

山と共に生く                         大塚明のぼやき

林業との出会い

       広葉樹集材風景
       広葉樹集材風景

私がこの仕事に携わってから30年近く経とうとしている。入社当時を思い出すと毎日毎日作業道の修理に明け暮れていたような気がする。ブルドーザ・バックホーなど所有しておらず、ジョレン・スコップ・一輪車・竹みをトラックに積み込み伐採現場に向かった。人力作業である。作業道も悪質で特に梅雨時は大きな水溜りができ、どんどん悪くなっていった。木材を満載したトラックが通りかかる“この先だいぶ悪うなっている、早く直さないと車がひっくり返るぞ”。その場所へ行ってみるとがっかりである。そこには大変な作業がある訳で・・・。

 その頃は、拡大造林が盛んで広葉樹林の伐採現場があちこちにみられた時代であった。そして、杉・桧・広葉樹なんでも高値で取引されていた。時の経過と共に材価はどんどん下落し、拡大造林は激減していくことになる。申し添えておかなくてはいけないが、当時、自社山林はほんの僅で他人様の山林を施業し営んでいた。

45年では成立し得ない林業経営

 我が社の設立は、昭和38年。それ以前は自社山林が無く、立木買い、素材生産をしていく中で、昭和40年代中頃から拡大造林の真只中に少しずつ広葉樹林を取得し、伐採・搬出・植林をして現在に至っている。そんな状況であるから自社山林から収入を得た事は一度も無く、自社山林による林業経営が実現するのはいつの事になるのか・・・見当がつかない。林業と名のつく会社であっても現状では林業経営が成立していないのが実情である。

山の魅力

       ヒカゲツツジ
       ヒカゲツツジ

山には奥深い魅力がある。春はわさび・たらの芽・こんてつ等の食材、つつじ等の花。夏はひんやりした木陰、谷沿いの冷気。秋はもみじなどの紅葉。冬は雪景色。

アオダモ・ナツハゼ・ネジキ・マユミ等広葉樹の花や紅葉は綺麗なもので、昨年あたりから興味が湧いてきた。山に入るとついつい目で追ってしまう。今までとは違った山の魅力にとりつかれはじめた。

 私の心を癒してくれる魅力溢れる山。この魅力を一人でも多くの人に知ってほしい。そうなれば山の価値も見直されるに違いない。そう導くのも山に携わる者の使命と考えている。

これからの林業に思うこと

集材線架設中
集材線架設中

 現在の杉・桧の素材価格はどうだろうか?それぞれ1㎥あたり1万円弱、1万5千円弱であろうか(一般材)。どう考えても林業経営が成り立つ価格ではない。杉・桧の人工林、最終目標は主伐により収入を得る事と考え、自社山林にも多少の投資をしてきた。しかし今、私は目標を見失った状態で、これから先どう方向を転換していったら良いのか?少なくとも出口は見当たらない。今年から林業行政も大きく変わり、森林経営計画を樹立しなくては今までの造林補助が受けられなくなる。私は補助の範囲内では自社山林にも手をかける準備はあるが、若令林ばかりの自社山林にはそれ以上の投資するゆとりは無く、積極策を講じるつもりはない。今は最低限の維持を目的とした施業をし時代の流れに期待するのみである。

架線による全木集材
架線による全木集材

その反面、高性能機械の導入や路網の整備だけでは施業が不可能な日本の山、特に岐阜県のように急峻で起伏の多い地形では、旧態依然とした技術に思われている架線集材技術は、存続させ伝承していかなくてはならない重要な技術であり、弊社は会社設立以来その技術を培ってきた。今後大径木として伐期を迎える山は日本に沢山ある。架線技術はどんな山にも対応できるからこそ必ず必要とされる時がくると信じている。私は、架線技術を守り将来に備えると共に自社山林でもこの技術を活かしていきたい。

山林所有者には、それぞれの事情や考え方がある、自然の山がそれぞれ違った様相を示

すように。そんな中で、いろんな山林所有者と出会うことにより今後の施業方針も見えてくると信じている。30年近く山と過ごしてきた人生、きっと来るであろう明るい明日を信じて・・・。

 私は山と共に生く。