2013年9月号
わが国の森林所有者のほとんどが、小面積所有者で構成されている。私が、林業経営を営む岐阜県において、民有林約373,000 haのうち5ha未満の所有者が87%を占め50ha以上の所有者は、僅か0.37%。面積にして約51,000 haにすぎない。
元来、所有森林の木を伐って生業としてきた、専業林家と呼ばれる人たちは少数派である。かつて、50ha程度の面積を所有していれば地域の大山持ちとして林業従事者を雇用し、そして、彼らも僅かばかりの所有する森林に植栽をして、50年後の収穫に夢を持って、こつこつと山の手入れを行ってきた。
特化した拡大造林政策により、森林組合を中心に山間部の雇用を生み出し、かつて無いほどの現金収入をもたらした。しかしながら、造林のみに依存し補助金による事業展開は、地域に根ざした山づくりの奥義を放棄し、木の成長と共に行う保育を怠った結果、林業経営を支えるに相応しい木材が減少した。
勿論それと同時に、石油化学製品の著しい進歩。外材の大量輸入。農業の衰退と同様に、林業も昭和40年代から加速度的な一次産業から二次産業への担い手の流出など、日本の社会構造の変化の波に押し流され、基幹産業の地位から転落した。
長引く材価の低迷は林業の採算性を低下させ、林業への関心を失った森林所有者も増加していると言われている。超大面積所有事業体である製紙会社ですら、森林経営は企業のお荷物的存在となっている。
昨年度より、新たに施行された『森林経営計画』。ごく一部の大面積所有者は『属人計画』による施業計画時代と変わらぬ林業経営を継続する。しかしその一方で、30ha以上の森林所有者は、施業計画による自伐林家的な森林を維持してきたが、100ha以上の用件を満たせない今、他の森林所有者と共同での森林経営を行うことが求められている。また、30ha以下の森林所有者については、森林組合又は民間事業体への森林経営の委託が奨励されている。
すなわち、日本の森林のほとんどが、『属地計画』による『森林経営計画』によって持続可能な森林経営を目指していくことになる。これにより地域の森林組合や民間事業体による大面積林業経営時代の幕開けになる。
サラリーマン所有者の小面積山林も山からの収入が当てにならない。大面積所有者の林業経営もままならない。森林経営計画を作成しない森林所有者は補助金の給付を受けられない。地域最大の管理面積を持つ組合の経営も立ち行かない。大企業による山林事業もかつては、経営の一翼を担っていたもののその面影すらない。
人工林資源の蓄積量が完熟した今、林業を産業として成り立たせるためには、根本から経営の見直しを図ることの重要性を理解しなければならない。