一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2013年2月号

岐阜の山を元気にする!という思いを行動に      長屋邦良のぼやき

地元の木を活かす思い

 私が“地元の木を活かす”ことを意識して行動に移したのは15年前だろうか。25歳で板取村の会社に戻った時、山奥の田舎の製材工場なのに製材主力商品は米松の梁桁であった。当時このことに対しては何の違和感も持たず受け入れていたが・・・

 それから10年経過した頃、大学時代の友人が弊社の家づくりに賛同しで脱サラし入社してきた。その友人が板取の製材工場で最初に言ったことが「こんなに杉や檜がいっぱいあるのになんで外国の木材を使うんだろうね?どうして地元の山の木を使わないの?」。まさに頭をハンマーで殴られた感じであった。

 当時、確かに周りの山々には杉や檜がたくさんあったが、梁桁に活用できる年齢には至っていなかった。そこで間伐材の杉中目材を集成材として梁桁に利用することで地元の木を活用することを推し進めていた。更に7年後には県内の素晴らしい製材所さんと提携することで100%岐阜県産材無垢の梁桁の活用提案ができるようになった。

米松の梁桁から県産材梁桁に変えることは今思えば簡単なことであった。地元の木を活かそう、地元の木を活用することで岐阜の山を元気にしていこう、という思いを行動に移す決断をするだけであった。

 

「ぎふ性能表示材」とは

 今、岐阜県も地元の木材を活用してもらうことに注力している。一例が「ぎふ性能表示材」の制度である。「ぎふ性能表示材」とはJAS規格に準じて岐阜県が定めた含水率・ヤング係数・寸法などの測定・表示基準をクリアした岐阜証明材のことである。この制度は非常に良い制度であると私は思うが、県民の方々にはなかなか浸透していない。県の市場調査の結果でも認知度は15~16%だとか。

 岐阜県の山を元気にするという大義を感じながら、ここで再度「ぎふ性能表示材」を考えてみると有意義な社会貢献できる制度であると感じてもらえると思うが、実はこの制度は家を建てる消費者にとっても直接的に大きなメリットがある。性能表示材はサイズの精度は言うまでもなく、一本一本の含水率やヤング係数つまり木材の強さまで表示されて誰が見ても客観的に明確に材料の性格がわかるのである。今まで木材料の品質は製材工場や流通過程の中で仕分けられ、大工さんや工務店という木を扱う職人の選択仕分けに任せられていた。これはこれで専門知識と経験で信頼ある選別がなされてきた歴史があるのだが、裏返すと客観的に評価できるモノサシが無かったということになり、客観性が求められる構造計算などの材料としては一歩後れていたということになる。一般的に「集成材は無垢木材より1.5倍強いのだ」という一般認識が広がっていることも無垢の木材の客観評価が無かった故の理由だと思っている。

 

県民のメリット

 「ぎふ性能表示材」として性能が明記されることで、木材は客観評価の中でより明確な適材適所の使われ方ができるようになった。これは家を建てる施主様にとっては大きな直接的なメリットである。また加えて金額的なメリットとしても岐阜県産材の支援制度で「ぎふ性能表示材」を使用することで20万円、内装も含めると30万円の助成金を受け取ることができる。これも大きなメリットである。

 一般県民に向けてこんなに良い制度が始まっているのであるが、情報が広まらない。県民への広報は様々な所で行われているが、地味な話題ということで注目されにくいと感じている。今後はもっと感性に訴えるような広報ができるといいと感じている。時間はかかるが、基本は県民のみなさんに広くこのような取り組みを理解してもらうことが大切だと考える。

 もうひとつ情報が広がらない原因に、生産工場の能力と流通との連携、ストック材料としてのコストの課題がある。これも鶏と卵の例えのように、売れれば市場原理で流通していくのであるが、先の話で一般の方に地元の木を使おうという意識が広がるのを待っているだけでは時間がかかりすぎる。

 

期待を込めて

 一般県民の方々は最終的な消費者であるが、その消費者に材料を提供する大工さんや工務店またはプレカット工場なども実は消費者なのである。この消費部分を刺激できるような施策があれば「ぎふ性能表示材」制度の利用を加速させることができると私は考える。

 例えば施主様に対しては、現在の補助金制度の金額について1棟当たり20万を30万~50万に増額したらどうなるか?金額の優位性もあるが、ちょっとした大金もらえるというインパクトが県内広報には大切かと思う。または施主様への補助金という考えだけではなく、それを採用した設計士、工務店、プレカット工場、そして大工さんというように業者部分の消費活動に対して貢献したところに補助金が届く制度も即効性ある策だと考える。もうひとつ「ぎふ性能表示材」などは伐採時期や県内生産能力の関係もあって在庫商品の管理が大変かと考える。材の流れがうまく出来上がるまでは製材工場や流通の段階での在庫ストックに対して金額的な補助があれば市場への品不足の解決策になるのではないかとも考える。

 まだまだいろいろな策はあると思うが、国産材流通には滞らない仕組みができることが一番だと考える。川上にばかり手厚い補助制度があっても、川下にばかり手厚い補助制度があっても、それは全体の円滑な流れを作るにあたってバランスが悪い。正解を出すことは難しいが、流れをつくるには出口をつまり消費側をいかに刺激できるかが最優先で大切であり、一般県民や流通の消費側を様々な方法で刺激することが川上から川下までがよどみない流れをつくることなのだと考えている。理想は県民の皆様に広く理解されて流通が活発になることであるが、木材業界の経済・流通状況の改善に期待していくにはあまり時間がない。出口を刺激する策を以って県産材の活用を活発にさせていきたい。

 最終的には“地元の木を活用して山を元気にしよう!”という決断を以って行動に移す人がどれだけ増えるかということである。