一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2012月2月号

新山林相続制度に思う             古川昌樹のぼやき

 「地震、雷、火事、親父(台風)」と言われるが、専業林家の当家では順に「相続税、気象災害、獣害、病虫害」と継承されている。この中で最も怖い相続税について話を進めたい。

 写真右の林分の様に何百年も前から美しい山林を伝承してきても相続の仕方次第では、皆伐や譲渡しなければならなくなり、写真左の林分の様に放置されることもありうる。専業林家にとって相続税は継続可能な林業経営を行っていく上で絶対に避けては通れないため、相続時になって後悔しないよう、今から相続対策を考える必要がある。

 平成24年より最低100ha以上もつ個人が属人的に森林経営計画を策定した場合、山林の相続税の80%の猶予措置を受けることができるというものである。

 初めは計画的な伐採を行う専業林家にとってはありがたい制度と思ったが、概要が明らかになるにつれ、厳しい縛りがあることに気付いた。

1.新制度における問題点

(1)新制度は、免除ではなく猶予措置であること

相続後、森林経営計画を10年間は遵守しなければならないという新制度は、計画的な伐採を行っている専業林家の我々にとっては、問題ではない。

しかしながら、昨今の木材価格の動向や補助金減少に伴う施業量の縮小等、その結果である施業未着手による猶予された相続税額の納付が発生する恐れがある。相続税の猶予を受けるためには猶予税額に相当する額の担保が必要であるため、猶予税額に相当する額の山林を失う可能性があることを忘れてはいけない。

(2)被相続人が経営計画の主体者でなければならないこと

 新制度では、被相続人が経営計画の主体者でなければ相続税の猶予が受けられない。

 すなわち、当家の場合この特例措置を受けるにあたって祖父を主体者にして父、私を取

り込んだ森林経営計画をたてた場合には、父、私は主体者とはみなされないため、相続税

の猶予が受けられない。そのため、想定外の事態、例えば事故、病気等で、父、私が亡く

なった場合にはこの制度が適用されない。

 しかし、当家では山林を祖父、父、私の個人名義でそれぞれ100ha以上持っているため

個別に経営計画を立てるという手法もあるが、それに携わる事務作業負荷の増大、補助金

申請などの場合に一本化した経営計画の何倍もの事務コストが掛かってしまう。

(3)相続人が一人であるということ 

 所有する山林を更に細分化しないこと、また規模拡大していくことには賛成であるが、我が家で抱える問題点は、逆である。

 この制度がもし廃止になったのち、家長一人で全面積を相続すると想定した場合、その者が亡くなった際の相続税納付額が莫大になる。リスクの分散という意味でも数人で持つ事が有利である。例えば、山林しか資産がない私たち山林所有者にとっては、妻が健在であれば配偶者控除を行った後の山林について相続人が一人ということを要望したい。

2.当家における新制度の活かし方

 平成24年からの最初の森林経営計画では、祖父と父、私の年齢差では相続が順当に行われると思われ、事務コスト削減などの利点からも一つの計画を作成するつもりである。

3. 伝承可能な山林づくり

 今まで、幾度となく山林の相続税を払いながら、インフラを整備し育林、造林をしてきた結果、現在の私たちの山がある。右の写真がそれである。

 

 車で乗り付けられる所に、樹齢100年を超える高齢級の林分がある。この様な、視覚的、生産性に優れたバランスの良い山林づくりを伝承させるという気概持ち、私の天命と思い山林づくりをしていきたい。

                 

 また、その為に最初に述べた「相続税、気象災害、獣害、病虫害」の内、相続税については唯一、人が作るものであり、我々の力でも改善の余地がある。改善点があれば希少種である専業林家である私が要望を率先して出していきたい。